「修復腎移植 その可能性と問題点」
松屋 福蔵先生(長崎医療センター泌尿器科医長) -プロフィール- まつや・ふくぞう 1951年、長崎市生まれ。長崎大学医学部卒。同医学部泌尿器科助手、講師を経て、1997年4月から現職(国立病院機構長崎医療センター泌尿器科医長)。1988年、腎臓保存の研究で博士号取得(水素クリアランス法による低温灌流腎の皮・髄質灌流量測定)。現在までに腎移植150例、腎がん手術約300例実施。現在、一般泌尿器科医として日常勤務、後輩の指導に当たる。 講演要旨 ・上記のとおり、修復腎移植について学会は、「現在の医療からはずれている」との見解を発表。 ・この問題が出た当初、私は腎がんの修復腎は移植できるのではないかと思った。ただICはどうだったのだろうか・・・など思った。 ・しかし、腎不全患者への治療は今から60年前に始まったが、今の医療が完璧というのはおかしい話である。 ・医療はまだまだ進行中であり、日進月歩である。 ・修復腎移植は、献腎、生体腎移植に次ぐ第3の道となるのではないかと素直に思った。 ・医学はサイエンスである。修復腎移植について医学的議論をもっとすべきではないのかと思っている。 ・学会の見解を受け、厚労省からも修復腎移植については、原則禁止の通達が出た。 ・一般的にドナーとなれる腎臓はこのように言われている ・修復腎移植についてはどうかと考えると・・・。 ・今までの学会や研究会での発表からも、腎動脈瘤等の悪性腫瘍(がん)でない病腎は、もともと移植をしていたものであり、問題はないと思っている。 ・ネフローゼ腎についてはいろいろと議論があるところである。 ・移植を受ける側は、がんがあった腎臓でもいいかどうか。 ・長崎県内の腎移植希望登録者74人と透析患者87人を対象に、修復腎移植を希望するかどうかをアンケート調査した。 ・その結果、A,B,Cの条件付きながら修復腎移植を希望するとの回答が、移植希望登録者の43%、透析患者の47%-という結果であった。 ・Dの絶対に受けないという患者は、ほぼ同様の40%大であった。 ・この結果を20年4月下旬に日本泌尿器科学会総会で発表した。 ・移植希望者が1割ほどではだめだが、4割以上の患者が移植をしたいと希望しているのであれば、修復腎移植は医学的にも検討すべきと言える。 ・生体腎移植の当てもないまま、腎移植を待たざるを得ない患者さんやご家族の『移植できる腎臓さえあれば』との思いを切実なものとして受け止め、ドナーの適応拡大について議論すべきだと思う。 ・小さな腎がんのうち4センチ以下の小径腎がんについて検討してみたい ・小径腎がんは、全摘出しても部分切除をし残しても、術後の成績は同じと言われている ・学会が、万波医師らの腎摘の方法が違う(血管をしばってからとるべきである)、宇和島は移植用の取り方であり、ドナーに危険があったと非難したが、血管をしばることにどれくらいのがんの転移に対して予防効果があるのかは疑問である ・どれくらい医学的根拠があるのかもう少し冷静にコメントしてもらいたかった ・過去の症例では、腎臓がんがあったドナーから偶発的に移植されたレシピエントで、生体腎で11例、献腎移植で300例あった。中央値は2㎝が一番多く、平均観察年は69ヶ月。 ・ところががんの再発はなかった。生着率は1年で100%、3年で100%、5年で90%。 がんの部分をとって移植可能ではないのか・・・という報告が2005年にあった。 ・今後症例を重ねる必要はあるが、小さな腎がんの腎臓は、移植に使えるというのは医学的にはある。 ・今後の問題として、ドナーに対してどのように説明するのかなど・・・を検討する必要があると考える。ドナーを大切にしなくてはならない。 ・腎摘出前に移植の話はいけない。ドナーあっての移植医療である。医療不信が起きないように手続きを考える必要がある。 ・また一定の危険(転移)があるということも理解してもらうしかない。 ・医療の現場では、部分切除でよい小さながんの場合でも、全部とって欲しいという例は確かにある。 ・長崎県での推計によれば、100倍すればよいが、摘出する腎臓は年間約13000個ぐらいと聞いている。 その中で4㎝以下の小径腎がんは約4千個。さらにきつく計算しても、200個は安全に使用できる腎臓だと思っている。 ・この4㎝以下、若しくは2㎝以下の小径腎がんの場合は、修復腎移植が可能と考えられる。 医療はだれのためにあるのか・・・ということを考える。医師のためではない。 医療界は修復腎移植について、もっとオープンに議論すべきだと思う。
by shufukujin-katudo
| 2008-12-08 18:07
| 12.7松屋長崎医療センター長講演
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